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  • Yusuke Fujisawa ( Professional Connector)

コンセプター坂井直樹さん×DeNA×リクルート若手クリエイター座談会


--始めさせていただいてもよろしいでしょうか。よろしくお願いします。

坂井さん いいですよ。さぁ、何について話しますか。僕は何でも良いですよ。

--そうですね。では、坂井さんのライフミッションは何ですか?

坂井さん ライフミッションって何ですか?(笑)ステレオタイプの質問だよね。

--すみません。えっと、要は人生におけるやりたいことです。

坂井さん 無い。考えたことない。やりたいことはすぐやるから。基本的にありきたりな質問は無しにしましょう。(笑)ブログとかインタビュー記事を読めば大体語ってるから。

その点、BBCのインタビューは面白かったね。いきなり、坂井さんはグルですかって。どういうことかというと、当時、日産のような大企業と僕のような個人は、言ってみれば巨象と蟻のようなものだから、コンサバティブな80年代の大企業に挑み、とんでもなくユニークなデザインを実現し成功させるというのは、まるで怪しい宗教の教祖のような力を発揮したのでは?と言う英国流のジョークだったんでしょう。

やっぱり、どう答えたら良いかわからないようなクリエイティブな質問は刺激があって良いよね。いきなり来て、グルですか?って普通、聞かないでしょう。だから質問はすごく大事。

ちなみに、今、僕は電通のBチームというプロジェクトでゲストとして面白いことに参加しています。そこでは多様な専門性を備えたあらゆる業界のプロがいてみんなが一次情報を持ってきては話す。つまりBチームではネットで検索したら出てくるような二次情報は評価されない。つまり世に出ていない情報はきわめて価値が高い。

だから、そこで話し合われているネタはすごく面白いんだよ。例えば、今、ゲーセンってどうなっているか知ってます?メンバーの一人が気づいたのは、ゲーセンに老眼鏡が置いてある。そこからこのインサイトはなんだろうと考えてみるとゲーセンって今、おじさんもおじいさんもいて、かつてのように子供や青年たちだけのものではないということが見えてくる。まさにこういう誰も知らないけど、自分だけが知っている生の情報を一次情報として教えて欲しいな。でも面白いのは、その一次情報も今この場で話したら一次情報ではなくなるからね。

--(苦笑)出てこないですね。すごく難しいです。

坂井さん 一次情報は自分の体験から生まれるからね。みなさん旅をした方がいいですよ。では僕から質問しても良いですか。男の欲望って何だと思いますか?わかる人いる?

--権力とか、あとは地位とかでしょうか。

坂井さん 他にはありますか?

--名声とかでしょうか。

坂井さん だいたい合っていて、そう地位とか名声とか。みんな男だからわかりやすい平凡な欲望です。じゃあ女性の欲望は何だと思いますか?

-女性の欲望ですか。うーん、何でしょうか。

坂井さん 難しいでしょう。わかる人?

--子孫を残すことでしょうか。

坂井さん 違う。女の人の欲望は、「愛」と答える。

--「愛」ですか?

坂井さん そう「愛」。これで何が言いたいのかというと、男女の価値観はもともと大きく違うんだからお互いに理解できない。だって違う価値観を持っているんだから仕方ないでしょう。分かり合えっこないよね。むしろ、この差異を理解した上でお互い付き合うと、うまくいくと思う。

あと、僕はほとんど女性としか一緒に仕事できない。(笑)昔の僕のチームは20人なんですが、19人女性でオカマが1人という構成だったんですね。なぜかというと男性とはうまくいかないことが多いです。男性はどこかで自分の考えを反映させたいと考えるので、時には僕とは別の方向を向きたくなる。クリエイティブはファシズムですから民主的な手法が良いとは限らない。家庭環境も、姉妹3人と母、そして祖母と、五名の女性と一緒に暮らし時期が長かったので、その方が僕自身もやりやすいんでしょうね。

--なるほどですね。誰しもが幼少の家庭環境の影響を受けているんですね。

坂井さん それはそうだと思いますよ。さて、どうですか。何を質問したいでしょうか。そろそろ出てきそうだと思いますが(笑)

--坂井さんは女性にモノとかプレゼントをあげますか?

坂井さん あげませんね。

--それはなぜでしょうか?

坂井さん 僕はあげない。なぜかっていうと結構シンプルで、プレゼントをあげることは相手にそうしないと男が不安だからでしょう。もので相手の好意を確かめたいというのは気が弱い証拠ですね。

でも消え物でサプライズはしますよ。いきなり空港でファーストクラスのチケットをその場で購入して、LAの家に連れていく。ほぼ誘拐ですね。しかも体験は何もモノが残らない消え物ですね。そういうサプライズはします。

--規模が違いますね。(笑)話は変わりますが、坂井さんが最近、面白かったものはありますか?

坂井さん これは、ミラノサローネで展示されていた友人の戸田正寿が開発した照明のプロダクト。この板状のLED。現在の構造は照明器具があって光源があるという構成。でも人間ってもともと「光」が欲しいわけでしょう。照明器具がほしいわけではない「光」が欲しい。そこに気がついたプロダクトがこれ。「光の板」。これは大体1枚10万円するんだけど、EUでバカ売れしている。

--誰がどうやって使うんでしょうか?

坂井さん 基本的に富裕層が買うんだけど、個人のクルーザーとか。船の壁とか天井に使っているんだよね。

--すごく面白いです。こんな発想はなかったですね。

坂井さん イノベーションの発想としてはこういうこと。何かを作るってことは、少しのアイディアでいいんだよね。でも形にするとこうやって売れる。形やサービスにすることの大事さはマークニューソンなんて、いい例だよ。彼が作るプロダクトは誰が見ても、マークニューソンだっていう。そしてマークが作った椅子は5000万で売れていく。

—5000万円。マークニューソンさんって初めはどうやって作品を作ってたんですか?

坂井さん 昔、彼が若い時に、シドニーにあった部屋に遊びに行ったらアルミ板を打っていて、傷だらけになりながら作品を作ってたよ。彼も最初は自分で作品を作っていた。だから自分でもいいし、人の手を借りてもいいけど作品を世に出さなきゃっていう気概が大事でしょうね。まず、人って何かを作ろうとすると、イメージをして構想するわけじゃないですか。そのあとに作り続けないと気が済まない人とそうではない人で分かれていきますね。

例えば、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの通称)でも、作る前にいろいろプロセスを考えてしまう人がいます。プロセスで死んでいく人が多い。そういう人が一番駄目な奴だと思っている。(笑)基本的に人間は何でも作れるんですよ。

だから、いきなり叩きながら椅子を作り出すマークが好きだし、僕も刺青のTシャツを作ろうと思ったのも一緒で、作ろうと思ったら、すぐにまずは生地を作ろうと。プリント工場まで持っていきお願いして作ってもらう。こういう何事も作れるっていう考えはどこからきているかというと、洋服を作れる人は世の中に何十万人もいるでしょ。それで、僕に作れないわけないって思ったんだよね。人間、大抵のものは自分で作れますよ。

--とても勉強になります。

坂井直樹さんが作ったTatoo-T-shirt(当時19歳)

坂井さん また、ブランドっていうものは時間だけが作り上げるものではないって言う考え。テスラなんて出てからたった10年で、今では世界のブランドランキングの10位でしょう。だから時間だけがブランドを作っているのではないと僕は思う。ブランドはユーザーに与える価値が影響しているし、ヘリテイジというコアがとても重要で、その過去から続くヘリテージと未来を同時に考えることが必要でしょう。*heritage(代々受け継がれた文化的な)遺産, 継承物, 伝統

--ヘリテイジですか?

坂井さん 国におけるブランドの考え方だけど、ヨーロッパは伝統を大切にしながら一方で新しいものを適切に加えアップデートする。つまり変化を極端にはさせないというブランドへの信頼が担保されている。一方、米国と日本は違う。出来るだけ変化を与えてデザインを陳腐化させ新奇性で購買のモチベーションを上げていく。

ここから日米、それに対してヨーロッパのブランドに対する考え方はそれぞれ違うことがわかる。米国はデザインそのものは経営資源として考えている。だからどんどんデザインを変えていってユーザの欲望を刺激して売れていく。

例えば、アップルは仏教で、グーグルはキリスト教かな。グーグルのあの四角い窓の中にみんなその時々の問題や悩み、そして欲望を書き込む。(笑)キリスト教の懺悔を想起させるよね。それに対して、アップルは仏教。ただひたすらユーザは信者として振る舞えば良い。(笑)

--坂井さんは、どんな影響を受けて新しいことを作りたいっていうお考えになったのでしょうか?

坂井さん 一番は作りたいという内から来る本能があって、作り続けたい気質があるから。あとは一つの要素として僕がヒッピーだったからでしょう。産業に対して反対する反産業的な思想ですよね。自分で物を作ってしまう。当時の僕はサバイバルすることに貪欲でした。それこそグーグルの元にもなった本をみなさん知ってますか。「The whole earth catologue」っていう本を読んでね。あれはDIYのバイブルですね。

--(一同iPhoneで本を検索)

坂井さん これは読んだ方がいい。火の起こし方とか書いてあって面白いですよ(笑)。

--火の起こし方ですか。(笑)

坂井さん 地球でどうやったら生き残れるか、そういうことをまとめている本。僕はヒッピーだったし、この本にも影響を受けて自分自身でサバイブする術を常に考えてきたんだよね。

--つまりそれが何かを作るという坂井さんの考えの元になっている。これまでたくさん成功してきたと思うんですが、坂井さんは失敗したこととかありますか。

坂井さん たくさんありますよ。言わないだけ。タトゥーTシャツを作った時にヤクザの方と揉めたりしたし、今でいうと僕の会社もいつ潰れるか分からないしね。(笑)

--えっ?!そうなんですか?

坂井さん (笑)いや、でもさっきのサバイブの話じゃないけど、それこそ僕の会社が潰れるか潰れないかという状況の時にどうすればいいか、何をしなければいけないかは僕は分かっています。だから、大丈夫。(笑)

--なるほどです。話は変わりますが、別の質問しても良いでしょうか。

坂井さん どうぞ。

--ジャックアタリの「21世紀の歴史」で国家のつながりがなくなるということが現実になってきました。坂井さんは国家と国民の繋がりについてどう思われますか?無くなると思いますか?

坂井さん そうですね。これからどんどん希薄化するでしょうね。むしろ固まっていることの方がリスクで、それこそ日本は北朝鮮からのミサイルが飛んできたら、終わりでしょう。中国人やインド人、ユダヤ人のようにどこの国でも生きていける強さ、文化が重要になってくる。例えば僕のオフィスの近くでも、最近増えましたしね。インド人のネイティブのカレー屋さん。日本語も話せないのにお店を作ってしまう。そういう強さが必要ですよね、これからは。

--強さですか。確かに、中国人はどこの国でも自分の文化を作ってしまいますよね。確かに、そこまでの強さは日本人にはないですね。話は変わりますが、宇宙ビジネスや宇宙についてどう考えていますか?

坂井さん 宇宙ビジネスだと、今の日本では堀江さんがロケット作ってるよね。彼は、資源を求めて宇宙という未開の地から得ようとしていると思うんだけど。もともと、地球にはプラチナがなかったし、隕石の衝突によって地球に存在しているとすると、宇宙にはプラチナの星みたいなものがあるという仮説は容易に想像できるからね。

話はかわりますが、みなさんはロシア人がなんで宇宙を目指したかって知ってる?

--ロシア人が宇宙を目指した理由ですか。わからないです。それこそ資源でしょうか?

坂井さん それもあると思うんだけど、ロシア人が宇宙を目指した本当の目的は、「永遠の生命」を求めていたという説があるんだよね。

--「永遠の命」ですか?

坂井さん あくまで説なんだけどね。宇宙へ出かけていて、地球に帰ってきたら、何十年、何百年と経過していた――。 こうした宇宙空間での「時間のズレ」は、浦島太郎の昔話になぞらえて「ウラシマ効果」と呼ばれます。宇宙空間での「時間のズレ」を利用すれば、ロシア人が「永遠の命」を目指して宇宙に向かっていたという考えはありえない話でもないと思うよ。アメリカが宇宙を目指した理由は、科学の発達によるものだけど、当時のアメリカとロシアで宇宙に対しての考え方が違ったかもしれないのは面白いよね。こうやって一つのテーマでも自分の仮説や考えを持つことからplanningは始まっているし大事だよね。

--面白いですね。お話を伺って色々な妄想や新しい発見があって、とても楽しかったです。自分にしかない一次情報を得れるように、これからはよりアンテナ張っていきたいです。本日はありがとうございました。

坂井さん こちらも楽しかったです。またお会いしましょう。

コンセプター

坂井直樹(Naoki Sakai)

1947年京都市出身。66年京都市立芸術大学デザイン学科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立、TattooT-shirtを販売し大ヒット。73年帰国後、ウォータースタジオを設立。87年日産「Be-1」を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。1988年にはこれまでのカメラの概念を覆すオリンパス「O-Product」を発表。95年、MoMAの企画展に招待出品し、その後、永久保存となる。2004年株式会社ウォーターデザインを設立。以降、数多くのプロダクトを手がける。2008年より慶應義塾大学SFC教授に就任し、デザインと通信技術やUIを研究、NS_CONCEPTブランドの開発に関わる。その後、2015年まで成蹊大学客員教授。ブログ「坂井直樹のデザインの深読み」を連載。著書に「デザインのたくらみ」「デザインの深読み」「EMOTIONAL PROGRAM BIBLE エモーショナル・プログラム バイブル ~市場分析、ブランド開発のためのマーケティング・メソッド」など多数。


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