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  • Yusuke Fujisawa ( Professional Connector)

ライフネット生命保険株式会社創業者 出口治明さんとの対話


--本日は貴重なお時間をありがとうございます。それでは早速ですが質問させて頂ければと思います。

出口さん どうぞ。なんでも質問してください。

--出口さんは人生の中で大切にされていることはありますでしょうか?

出口さん それは「正直」であることですね。

--どうして正直であることが大切に思えたのでしょうか。その原体験はおありでしょうか?

出口さん 原体験は簡単で、29歳の時に初めて東京に来た。それまでずっと関西だった。最初の晩に会社の先輩が、「お前、銀座に行ったことないやろ。今日は歓迎祝いで連れ行ってやる。」と。みんなで5人くらいで、銀座の小さなスナックで歓迎会をしてくれた。そしたら、綺麗なお姉さんがビールを注いでくれた。先輩たちがよく通っていたスナックだったんでしょうね。そのお姉さんが「お見かけしたことありませんね」と声をかけてくれたんです。そしたら先輩が「こいつは大阪の田舎から来たんや。」と。「お若いですね。おいくつですか?」と聞かれ29歳と言えばよかったのに、「27歳です。」と答えてしまった。見栄を張って。そしたら「干支は何でしたっけ?」と聞かれて瞬時に詰まってしまった。

--出口さんが答えに詰まることが想像できないですね(笑)

出口さん この体験から見栄を張って嘘をついたら、いかに後が大変かということを身をもって知ったんです(笑)。それからはいつでも「正直」でいようと、「本当のことだけ」言おうと。その方が、世間も渡りやすいですよね。人によって言うことを変えたら、覚えておかないといかんでしょう。Aさんにはこれ。Bさんにはこれというように。面倒くさいし、人によって言い方を変える人って、職場でも信頼できませんよね。

ちなみに去年の2月頃に発表されたエルデマンのレポートを読めば、北米やヨーロッパの指導者にどういう要素を重視しますかというアンケート調査で5〜6割が正直であることと答えていて、ぶっちぎってトップです。いろんな要素があるんですけれど、正直であることがトップ。一方日本では確か5位なんです。20数%しかない。そうすると、東芝事件とかあり得るんだなとわかりますね。

--粉飾決算のようなことが起きてしまうと。正直ではないことで、大きな壁にぶつかってしまうと。人間関係もそうでしょうか。

出口さん 表面を取り繕ろうようになってしまうと、まず楽しくない。人間として、社会人として正直な方が大事やろと。その方が楽やでと。

--なるほど。確かにおっしゃる通りだと思います。正直であることはとても大切ですね。出口さんが人と出会って楽しいと思う瞬間ってなんでしょうか。

出口さん それは簡単で、面白いことです。僕は人・本・旅って言っていますが、「人に会う」「本を読む」「いろんな現場に行く」。人も本も一緒で、おもしろい本だったり、おもしろい人に会った方が楽しいに決まっているので(笑)。一緒にいて楽しい、おもろい以外の条件は無いですね。

--僕も出口さんの本を読ませて頂いたんですけれど、出口さんが読まれてきた本の中で最もインパクトのあった本は何でしょうか?

出口さん そんなものがあると思ってる方が間違っていると思いませんか。あなたは中学・高校で運動部やってましたか??

--蹴球部、サッカー部でした。

出口さん 新入生が入ってくるでしょう。それで、その時にこいつはセンスが良いし、脚力もすごいから、正選手(レギュラー)になるなと、一方でこいつは練習しても微妙やなとか分かりますよね(笑)。

--練習していると確かにわかりますね(笑)。

出口さん じゃあサッカーを6年間やっていて、例えばあるコーチの一言で急に上手くなった経験ってあります?

毎日辛い練習をやっている中でちょっとずつ技量が上がっていくのが普通じゃないですか。もちろんセンスもありますが。

--基本は一歩ずつだと思います。そう思います。

出口さん ということが分かっていれば、人生においても同じでこの一冊を読んで目から鱗が落ちたという本はそんなにないんですよ。それはできの悪いビジネス誌が、話を面白くするためにこういう劇的な出会いがあったとか、大きな影響を受けた本があるとかおもしろおかしくするためにフレームアップしているだけだと思うんですよ。

--こういうお話が聞きたかったです(笑)。

出口さん ほとんどの話が、一歩ずつということであれば、本をたくさん読んでいくうちに、あるいはたくさんの人に会っていくうちに、その人の意見とか考えとかが出来てくるので、劇的に変わったとかいう話は大体後から創った物語ですよね。

--ストーリーを作って脚色しているということですね。

出口さん そう。例えば、パウロという人間がいた。キリスト教徒を弾圧していた。エルサレムからダマスカスに馬を走らせている時に、光が天を覆い馬から落ちて目が見えなくなってしまった。パウロが焦っているとイエスの声が聞こえてきて、「パウロ、なぜ私の可愛い弟子をお前は迫害しているのか。」そこでパウロは改心して、熱心なキリスト教徒になったと。こんな劇的な変化って普通はありえませんよね(笑)。普通の変化というのは中学や高校での運動部と一緒であると。

--まさに一歩ずつという積み重ねでしか変化はないということですね(笑)。

出口さん 人間にとって劇的な転機とか、何かすごいことがあったからその人は変わるとか、その考え方自体が間違っている。それは出来の悪いビジネス書を読みすぎであると。

--まさにその通りだと思います。最近、出口さんが人と会って「おっ」て思う興味深いテーマや発見はありますか?

出口さん 山ほどあるので。毎日いろんな発見をしているので何を話そうかと思うんですが(笑)。最近聞いた一番面白い話は、外国の企業のトップと議論していると、ほとんどがSDGsの話をすると。

—SDGsとは何でしょうか?

出口さん 外国のリーダーたちは誰もがSDGsの話をしているけれど、日本の企業のトップは今期はどれぐらい売り上げたかなど小さい話しかしない。日本の経営者に話してみると1割の人は知ってるけど、それ以外の経営者は「それ何?教えてください。」と。このすさまじい情報格差が最近面白かった話の一つですね。

--情報格差ですか。

出口さん グローバルな経営者はSDGsこそ、これからの経営の核だと思っているのに、日本の経営者はSDGsのことをそもそも知らない。または知っていても興味がない。恐ろしいという意味で面白い。SDGsはSustainable Development Goalsの略で、国連が2030年までにこんなことをしなければいけないと定めた17項目の目標です。例えば、みんなに綺麗な水を飲んで欲しいと。そういう目標があると。でも2030年のゴールを考えたら、今から13年もあるんだからグローバルな経営者は、ここにビジネスチャンスがあると考えている。世界中の市民に、綺麗な水を飲ませようと思ったらどうやればいい?

--えっと、資源を探すか資源を生み出すかでしょうか。

出口さん 資源を生み出すというと、水道を引くということ?

--水道を引くこともそうだと思います。

出口さん あるいは海の水を淡水化するということ?

--はい。それか発掘するか。

出口さん 井戸を掘るということ?

--そうですね。ゼロから生み出すか、今あるものを変えるか。

出口さん えらい頭が硬いよね(笑)。もし水道を引くとか井戸を掘ろうとすると、コストがかかるし、環境への負荷もバカ高いじゃない。井戸掘ったら地盤沈下するかもしれないし。

--そうですね、リスクがあります。

出口さん 今、世界中のリーダーたちが考えているのは、ペットボトルです。

--ペットボトルですか。

出口さん ペットボトルに池の水を汲む。そしてふたをする。ふたに浄水機能をつけておいたら、そのまま飲める。その方がはるかに効率が良いし、そこにある水がすぐに飲めるわけだから。綺麗な水はないけれど、汚い水はあるわけだから。

--確か、細菌とかバクテリアとかをフィルターを通して綺麗に水が飲めるプロダクトですよね。

出口さん そうそう。例えば、そういうことをビジネスに変えたらものすごい商売の可能性があると。SDGsという世界が進もうとしている大きい流れがあり、その流れの中で社会にいかに貢献するかを世界のCEOのほとんどが考えているのに、日本の経営者と話していたら誰1人としてSDGsの話が出てこない(笑)。

--すごくこの話は興味深いです。僕もこの仕事をやろうと思ったきっかけは、日本国民全員が、社会への貢献や、人類の幸福、それぞれの夢の実現へ立ち向かって欲しいので、そのきっかけになれたらと思いこうして著名な方に対話をして発信しようと始めたんです。

出口さん SDGsの話は、きっとみんなが無知だからだよ。

--無知ですか。

出口さん 知らないから。知らないことに対しては誰もワクワクしないから。SDGsのようにこういう野心的でワクワクするようなことを、世界のトップは考えているんだということがわかれば、みんな自分も考えてみようとなるよね。知らなかったらそんな誰も考えないよね。だから知識は力であると。

--本当にその通りだと思います。僕もそうですし、若手のビジネスマンとよく接する機会が多い中で、世界と比べて社会貢献とか人類の幸福への熱量が低いのかなと感覚的に感じています。僕はそれは日本の環境かなと考えているんですが、これは何が要因なんでしょうか。

出口さん 環境って何でしょうか。

--一つは教育環境だと思います。

出口さん 教育よりも、僕は社会そのものだと思っていて、社会にロールモデルがないことが問題だと思っている。

--ロールモデルですか?

出口さん そう。人間ってそれほど賢い動物ではないので、みんなが勉強したら勉強するんだよ。僕の友人で比較的ナマケモノの医者がいた。ハーバードのマスターコースに行ったら、周りのみんなからお前はナマケモノやと言われたと。

--なんででしょうか。ハーバードに行かれているんですよね。

出口さん それはみんなダブルマスターを二つ三つ取っているのに、お前はハーバードだけやないかと(笑)。それで、みんなにバカにされたのでボストン中の大学院を慌てて調べて、今から入学できるところないかなと。完全に出遅れていたので唯一残っているのが、あろうことか音楽の指揮者のコースだった。バカにされたくないので、そこに入った(笑)。

--音楽の大学院に入ったんですか。まさに周りの影響を受けてですか。すごいことですね(笑)。

出口さん そう(笑)。でも人間ってその程度で周りの影響を受けやすいと。周りの影響受けないと人間は何もしない。例えば日本人って英語下手やんか。

--はい。

出口さん なんでだと思う。皆なんて言ってると思う。英語教育が悪いって言ってるわけだよね。中学、高校の先生TOEFL何点取ってんねんとか。発音もひどいねとか。そんなことは枝葉末節でどうでもいいことだよね。まったく本質的ではない。

僕は英語を1年で、上手くさせる方法を知ってる。めちゃ簡単に言えば、経団連の会長と全銀協の会長が共同記者会見して、日本人の英語力がひどいので、来年からTOEFL100点以上取らなければ、経団連参加企業や全銀協の参加銀行は就職面談しませんよと言えばそれで終わりだよね。そういう仕掛けを大人が作ることができないで、若者の意欲が低いとか英語力低いとか、中学校の先生のせいにしたりして、そんなんアホかという話だよね。

--こういう本質的な話を伺えて、とても嬉しいです。日本の経営者の中でも上辺だけいう人もいらっしゃると思っていて、このようなお話を伺えてとても貴重だと感じています。それこそ、いろいろな経営者はそれぞれ考え方も価値観も違うと思いますので。

出口さん 僕は大体人間はもともとアホな動物だと思っている。賢い人なんていやへんで。しかも人間の脳みそは1万年以上も進化していないので。タテヨコ比較と数字ファクトロジックやでといつも言っている。昔の人が何を考えていたか、世界の人はどう考えているかと。あとは数字とファクト。ストーリーだけのエピソードでやってもあかんねんと。

エビデンスが大事でデータで示さなあかんと。そこに数字