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  • Yusuke Fujisawa ( Professional Connector)

ソニー・デジタルエンタテインメント社長 福田淳さんとの対話


福田さん このインタビューのアウトプットというか、目的は何でしたっけ?

藤沢 ぼくはプロフェッショナルコネクターという仕事をやってるんですけども。多分これからは誰かに仲介されて人に会う価値って高まってくると思うんですよね。例えば、ある一定の著名人の方って誰とでも会えると思うんですよ。

福田さん ええ。

藤沢 でも、そこでは出会えない層ってあると思うんですね。ぼくだと若手とか。新進気鋭の起業家とコラボしたらビジネスとしても面白いアイデアとかコンテンツとか生まれる機会って増えると思うんですね。そういった意味で仲介人と言いますか、繋げる立場の人でセルフブランディングをしていきたいなと。そういう意味でも著名な方との対話を通じて、ビジネスのタネになるようなエッセンスを発信しています。

福田さん はーい。目的はわかりました。

藤沢 質問いくつか考えてきたんですけど、最初はちょっと…

福田さん ベタなところからいきますか。

藤沢 そうですね。ベタなところからいきたいですね(笑)。じゃあまず初めは、福田さんにとって「遊ぶこと」ってなんですか?

福田さん えーと、そうですね。ぼくは公私混同は良いと考えてまして。結局、寄り道とか遊びだけが自分を助けてくれたと。象徴として日経新聞がいけなくて。みんな土日は遊び人とかコンシューマーなんですけど。月曜日の朝に日経新聞を読んだ瞬間にまともなビジネスマンやんなきゃいけないというスイッチが入っちゃって。ブロードバントだとかVRだとかAIだとかね。わかんないこと言わなきゃいけないわけですよね。

だけど、本来の人間って別にそんなことないリラックスした時には厳しいコンシューマーなわけじゃないですか。

藤沢 仰る通りです。

福田さん だから、遊びがないところに新しいビジネスのネタはない、と。この前大学生に講演したら、アソビシステムに入りたいって言ってきた青年がいるんですよ。就職活動で。アソビシステムといえばね、きゃりーぱみゅぱみゅとかそういう芸能事務所じゃないですか。そうすると、きゃりー好きだったり渋谷のWOMBで踊ったりが好きなの?って聞いたら「いいや」と。

おや?(笑)

藤沢 (笑)

福田さん 就職先の一つとして考えてるだけなんですね。好きこそものの上手なれもなくて、全く主客逆転しちゃってて。なんかそういう遊びがない社会って非常にタフに見えるんじゃないと。

ずっと好きで好きで就職のことなんか考えてなかったけども起業してうまくいった人っていっぱいいるわけなんで。方程式なんてないんだけど、ぼくにとって遊ぶことだけが、もっというと「余暇をどうやって自分の好きなことで過ごすか」だけが人間のゴールなのかなと。

で、もうちょっと哲学的なこと言うと、人間の進化って余暇作る歴史なんですよね。ダーウィンの考えじゃない方が人間の進化を推進してきたと。

つまり、弱いから進化してきたんですよ。強強じゃなくて弱々連合。みんながターザンみたいにムキムキで体強かったら進化いらないわけで。

寒いやつがいるとか弱いやつがいると死んじゃうから助けて都会を作っていったわけですね。

藤沢 確かにそうですね。

福田さん どんどんどんどん進化してきて、農業革命があって。この前経済学者がサウス・バイ・サウスウエストで言ってましたけども、1800年のアメリカでは80%が農業従事者、2000年では1.7%だったと。ファーマーはいなくなったんですよ。200年かけて。

AIが出たら警備員いなくなって、弁護士いなくなるのかってなるかもしれませんよ。突然職を失う人もいるかもしれないけど、すごい長い時間をかけてシフトしていってる。

ぼく20代で東北新社入ったとき、月に一回くらい土曜日も出てたんですよ。

藤沢 そうなんですね。

福田さん でも今ヤマト運輸でドライバー確保しようと思った時、週休3日でしょ。まあいろんな事情があるにせよ、人間のテクノロジーの進化によって、人間の余暇の時間が増えなきゃ嘘。だから、人間は週に2日間くらい働いて5日間くらい遊ばなきゃいけないけども、クリエイションの人間は遊べないんで、AIでもドローンでもVRでもどんどん人間の毎日を合理化した時に暇つぶししかなくて、その暇つぶしがクリエイティブでなければやっぱり人間らしいと言えないと思うんで、1番最初の質問、本題なんですけど(笑)、遊べなきゃだめですよね。

藤沢 素晴らしいですね。

福田さん で、今働き方改革とかありますけど、あれ本当に長い目で見たら何にもしなくていいんですよ。どうせ暇になるんですから。

藤沢 いやー、本当にわかります。あのー、ぼくもここに来る前に福田さんの記事をたくさん読ませていただいて。公私混同であるべきだっていうキーワードにすごい共感してまして。今仰ってもらったようにトレンドとして副業推進だとか自分のやりたいこと見つけなさいって言われてると思うんですけど、福田さんが今までやってこられたことって、例えば映画撮りに行かれたりとか小説を書かれたりとか、たくさん熱中されてきたと思うんですね。それが今に活きてるっていうところは変わらないと思います。人間って。

福田さん うんうん。

藤沢 それで仕事も遊びも両方できてないと余暇って見えてこないんじゃないかなと個人的にも思います。

福田さん 絶対そうですね。

だから、IT長者がね。なんかブサイクな女連れてね、あのー…

藤沢 ブサイクかどうかはわからないですけどね(笑)

福田さん ブサイクな方がイメージしやすいかなって(笑)で、それがなんでかなと考えると、それがゴールではないって気づくまでのトライですよね。結局お金なんて何にも自分を変えてくれないし。ただ、この前堀江さんだったかな。そういうITの若い人たちにあんまり美味しいものとかお店行かない方がいいよ吉野家がまずくなっちゃうからってのが賞賛の嵐だったんですね。そんなのおかしくて。

人間生きたからには最高も最低も全部知ってオルタナティブを知るというか。生まれたからには世界中全部行きたいし、いろんな人と話して、成功したり失敗したりしたいし。70億人いてなんで英語喋りたいって思ったかというと、やっぱり1億人だけでのコミュニケーションで終わりたくないと。せめて50億人くらいは話してさよならしたいってのがあるわけじゃないですか。

藤沢 いいですね。

福田さん だから、なんか本読むのも大事だしいろんな人を愛するのも大事で、そういう常に自分が、昨日からの連続で明日があるんじゃなくて、新しい自分がなりたいことを見つける、これがThis is what you wantだっていうものを見つけないと、おそらく人類そのものの進化が停止しちゃう。だから、働き方改革したってみんな知ってんじゃないの?と。むしろ遊び方改革、遊び方提案って難しいよと。じゃあ今晩夜遊び行こうかって行くじゃないですか。

藤沢 はい。

福田さん どの店で何食べる?ってコンセンサス要りますよね。

藤沢 間違いなく発生しますね。

福田さん じゃあ週末みんなで踊り行こうかと。どこ踊り行くって言ったっていろんな音楽の違いもあるし、そこDJ悪いから嫌だって言うかもしれないし。二次会三次会行ってどうやって帰る?とかロジティクス考えなきゃいけないじゃないですか。

藤沢 そうですね。

福田さん 自分の生活の体幹がすごい鍛えられるんですよ。最近高校の先生かなんかが暑い真夏の中で女子マネージャーを走って帰らせたら倒れて意識不明になっちゃったとかありましたよね。そんなのはリアリティの欠如で遊びが足らんからそんなことになるんですね。

藤沢 うーん。なるほど。

福田さん なんで不良がビジネスで成功するかというと体幹整ってんですよ。つまり町の怖さ知ってる。殴られたら痛いとか、映画みたいにパチンみたいな音しないし(笑)、怖いわけですよね。

藤沢 鈍い音しますよね(笑)

福田さん 鈍い音するし(笑)、血出たら死ぬかもしれないと思うし、酔っ払って倒れて頭打つ人いっぱいいますけど大丈夫かなと思うこともあるし、いろんな隣り合わせの死って自然そのものですけどそういうのを見て人生のバランスの感覚が整うというか。

つまり、人間らしさの追求がクリエイティビティであるならば遊ばないとダメっていうのがぼくの1問目の回答です(笑)

藤沢 ありがとうございます(笑)。次の質問なんですけど、直感でこの人面白いなとかこの人と遊んでみたいな方ってどんな方になるんですか?

福田さん 結局打率なんですよね。学生と話すと磨かれるんです。どうやったらモテますか?とか聞かれたり。それはやっぱり素振りじゃないって。家にこもってたらそりゃモテるわけないよねと。でも、相席屋毎日行ったらモテるかもしんないじゃない?

藤沢 あはは(笑)

福田さん 例えばナンパ上手い人って若い時にめちゃくちゃ街で声かけてますよね。あれも、体幹鍛えてるわけですよ(笑)

藤沢 いわゆるイチローさんですよね(笑)

福田さん すごい練習してない天才っていないと思うんです。で、あれ?質問なんだっけ…?

藤沢 えっと、面白いなとか遊んでみたいって思う方ってどんな方なんですか?打率打ってるということですか?

福田さん そうですね。あと、知識欲が豊富でたくさん旅をしてる人が面白かったりしますね。なんでかっていったら一次情報を持ってるんですよ。一次情報って街にしか無くて。セブンイレブンってなんで集金に護衛の人がいないかわかります?セブンイレブンって自分をコンビニと思ってないんですよ。銀行だと思ってるんです。店の売り上げをセブン銀行に入れるから警備が要らない。それは街歩いてて疑問に思って聞いた人が知ってるんです。それって一次情報なんですよ。

藤沢 なるほどなるほど。

福田さん そういう情報ってネットに出てないことが多いんですね。むしろ銀河系で比べたらネット上にある情報なんてちっぽけ。たった20億人しか使ってないネットに何があると。もっというとFacebookの投稿もLINEのやりとりも一切Googleに引っかからないぜと。検索が教えてくれることなんて狭いんだぜと。

藤沢 素晴らしい。

福田さん 面白い人ってのはやっぱり検索に載ってないような一次情報を外で見つけてくる人。例えば今インスタにあげるためにナイトプール行く人たちがいるじゃないですか。それはそれでいいと思うんですよ。自分がそこに行って、こういう風に感じたっていう体験があることが大事なんでね。他人がなんて言おうが関係ないんですよ。

藤沢 仰る通りです。今の話でキーワードは二つあると思います。一つは一次情報の価値。もう一つは体験。これから自分自身がコンテンツとなっていく世の中で、その二つはレパートリーをたくさん持つべきですよね。

福田さん そうなんですよ。で、その体験ってどうやって生み出すかというと「好奇心」なんで。今キューバに行きたくないと思ってる人は行っても面白くないんですよ(笑)。何があったって、ちょっとキューバ行きたいなって思う人は好奇心あるんじゃないですかね。

藤沢 ぼくリクルートにいたんですけど、多分リクルートの社員ってキューバに行きたい人多いんですよ(笑)。それとかも好奇心のセンスがあるんでしょうね。何か生み出そうと躍起になってるクリエイターみたいな人は今の話でキューバに行きたくなってんじゃないかな(笑)

福田さん それは、根底にあるのはマネージするよりリードせよっていう精神じゃないですかね。マネージャーじゃなくリーダー。マネージするのは数字だけでもいいですけど、リードするためには右脳を使ったイノベーションが絶対いるわけで。そういう起業文化が流れてるのかなと。

藤沢 ちょっと話ずれちゃうんですけど、僕ソニー・デジタルエンタテインメントさんってコンテンツだと思ってるんです。ANIMAXさんだったり。

福田さん はいはい。

藤沢 そこでお聞きしたいのがコンテンツってなんなのかなって。福田さんの考えるコンテンツとはなんですか?

福田さん 聖書の中に、「新しいお酒にはいい革袋を」ってあるんですけど。ネットの世界って栄枯盛衰が激しいですよね。僕がiモードやってたら、次はmixiだってなって、今度はグリー・モバゲーがきてこれでなんかやってなきゃいけてねーぜってなって、でこれからはFacebookとLINEだぜってなって…。もうね。いいけど、プラットフォームってなんなんだって。プラットフォームはコンテンツを繋ぐって言うけど、別に大した役割じゃなくて命も短いんですよ。ネットにおいては。

でも、ローマの休日っていう半世紀以上前に作られたコンテンツっていうのは明日観る14歳にも新しい価値を持ってて、人に影響を与えることができる。プラットフォームも大事なんだけど、コンテンツの方が大事なんですよね。

藤沢 プラットホームも大事ですけど、コンテンツの重要性は僕もそう思いますね。

福田さん だけど、世の中はそっちの方が儲かるからなんとなく軽視している。コンテンツ重視型のベンチャーがホリエモン世代でやっぱりほとんど出てない。でも20代後半だと個人レベルでは出て来ていますね。

コンテンツにテクノロジー使い始めるという新しい潮流が出てますよね。この10年で新しい世代が出て来たのかなと。僕はそういう人ばっかり応援してます。

サービスは、人の生活を豊かにする、社会との接点をゴール設定しないと、長く続かないしお金のためにやってる仕事になると思うんですね。お金のための仕事がなんでダメかというとお金って目的じゃないから(笑)。これ、何度もみんな言ってるのにそう思わないんですよね。お金は目的じゃなくて手段なんですよ。

例えば僕が夜バーっと遊びたいと思ったら50万円必要とかね。別に50万なくても違う遊びの方法考えますしね。お金ってあったら解決できるし、なかったらないでいいんですよ。

藤沢 僕がリクルートから独立した一つのきっかけっていうのが、とあるワークショップだったんです。キングコング西野さんや金スマを手がけたバラエティプロデューサーの角田さん、PARTY中村さん、パーティクリエーター/DJのアフロマンスさん、SHOWROOMの前田さんが講師のワークショップで。(※CREATORS CAMP TOKYO2017 powerd by Recruit )これからは個人が自分で社会に発信していかないと生き残っていけないよと。会社に所属するのもいいんだけど自分を何かコンテンツ化しないともうやっていけないよっていうワークショップだったんです。それで僕もリクルートを辞めるというリスクをとてこういう活動をさせてもらってるんです。

福田さん 素晴らしいと思う。

藤沢 個人が若者も含めてそういう風になっていけば日本も変わっていくんじゃないかなと思います。

福田さん 絶対そうですね。世界中回ってて1年の半分くらいは外人として過ごしてるわけで、そうしてると世界のことがよくわかるんですね。

思ったのが、アメリカ人と中国人って合うんですよ。個が強くて自己主張するから折り合えるんですよ。

藤沢 主張が強いんですよね。

福田さん 日本は相手の事情を考えるから、よく言うとおもてなしとか心遣いが細かいとか。他人を通じて自分を作る形成をしてるんです。でも、中国とかアメリカ・ロシアみたいな大国は同じ言語のプラットフォームを持ってる。

藤沢 そうなんですよね。自己主張型ですね。

福田さん 日本人は意外と韓国人と合うと思うんですよ。発想が似てるんですね。歴史的なことで囚われすぎちゃってますけどね。あれ、OSをアップデートすればきっといい関係になると思います。

藤沢 そうですね。

福田さん 世界中行ってると、なんでこの人たちこうなんだろ?みたいに色んなことを疑問に思って知っていくんです。

藤沢 こういう話、大好きです(笑)。さっきの個人がクリエイターになるって話や遊びが大事になってくるって話も多分全て共通した話題だと思うんですけど、これからいかに人間がコンテンツ化していくかと言ったときに、角田さんが提唱しているのがどの職種がこれからのプロフェッショナルかというと「芸人」らしいんですよ。

福田さん そうかもしれないですね。外との接点が多くて知ってるってことでしょうね。

藤沢 仰る通りです。芸人って芸を極めた人だと思うので、世間の思う芸人ではなくエンターテイナーだと思うんです。

福田さん そうですね。マーケターなんですよね。マーケットを見てる人なんですよ。どの商品も製品もサービスも社会との関わりなしに生まれないと。で、世の中の出来事って絶対理由があるし、もっと良くする解決策ってあるわけなんです。そういうことを考えるのがマーケターであり、自分の仕事かなと思ってんですよ。

藤沢 めちゃくちゃかっこいいですね。素直にそう思います。僕も独立してこのサイトを立ち上げたのはセルフブランディングっていうより、マーケティングでもあるんですけど、福田さんのような多角的に何かを熱量高くやるってところに学びを得ました。

先ほど気になったことがあるんですけど、ユダヤに僕もすごい興味があって。ユダヤ人のWhy so thinkingって考え方を福田さんも常に持たれてるなって思うんですけども。質問なんですけど、福田さんの原体験ってありますか?

福田さん ぼく次男だったんですよ。本当に親に怒られたこともなくて。父親がユーモアのセンスがある人で家中を笑わせていたんですけど、僕が何かいけないことをした時に皮肉で返すんですよ。

藤沢 ええ(笑)

福田さん 例えば僕が、「このボタン押したい」って言ったときに母は「危ないからやめなさい。腕が折れるわよ」って言うんだけど、父は「やってみろよ。指潰れちゃうぜ」って言うんです。だから、ビビってできない。

藤沢 それはできない(笑)

福田さん だから良いのか悪いのかわからないですけど、親から怒られたことないんですよ。何か新しいことやるのにためらいがない家庭環境だった。

藤沢 素晴らしいですね。

福田さん あと、家の前が公園で小学校の時は野球少年だったんです。みんなで野球やるんですけど、暗くなってきたら家が遠い子とかは帰っちゃうんですね。で、3人だけ残る。3人しかいないなら帰っちゃえばいいのに、あまりにも野球好きだから辞めないんですね。3人でどうやって野球するかって言ったら、一人がバッター兼キャッチャーなんです。これが厳しい。空振りすると自分で捕りに行かないといけないから。

藤沢 ははは(笑)

福田さん むっちゃハードなんです。ピッチャーは絶対一人要るし、外野が一人。これで3人野球ってできるんです。これをずっとやってて。

藤沢 それを夜まで(笑)

福田さん それぐらい野球が好きで、誕生日の時に父親が「何が欲しい?」って言った時に「あの公園にホームベース作ってくれ」と。ホームベースって杭を入れなきゃいけないんで、公園ってパブリックなものなのに、自分が使うホームベースを提供しちゃったんですよ(笑)

藤沢 すごいですね(笑)

福田さん 田舎だからそういうことが許されたんでしょうね。だから、僕は元々自分が何か所有したいとかなくて、みんなを楽しませたいってのが最初からあった。

藤沢 共有ですよね。

福田さん 共有ですね。今風に言うとシェアリングエコノミー(笑)そういうのが幼少期からあったのが一つと、ユダヤ人との共通点でいうとホームレスなんです。ユダヤ人って流浪の民ですから家がないんですね。

藤沢 そうですね。

福田さん 俺ん家はイスラエルだって言うけど住んでるわけじゃないんですよ。そういうアイディンティティーで生きてる。ぼく20代の頃からユダヤ人と仕事してるんで、ユダヤ人の特性についてはよく勉強して聞いていたんですけども。ユダヤ人が亡くなった時の香典ってなんだか知ってる?

藤沢 全く知らないです。勉強不足です。

福田さん それは植林なんです。イスラエルに500本植林しましたよっていうのが皆嬉しいんです。イスラエルって何にも緑が無い国なんです。砂漠なんですよ。荒野なんですよ。そこに植林したって言ったら、お前は仲間だって言ってユダヤ人コミュニティに入れて貰えるんですよ。

藤沢 今鳥肌立ってるんですけど。いや本当に。

人間ってすごい不思議なんですけど、人に喜ばれるだったり、違う人種・文化の中で共感し合えるコミュニケーションって結局は相手への興味・関心なんですかね…?

福田さん そうですね。あと、恐怖ですね。

藤沢 恐怖ですか。

福田さん やっぱり怖いんですよ。誰にも言いたくない気持ちって根本にあると思うんですけども。人間って弱々連合なんで、弱いところをわかってもらうしか人って繋がっていけない。

だからビジネスマンってね、全く馬鹿なんですよ。馬鹿なことを言ってしまう。Win-Winだとか。だって、もしお前がWinだったら誰とも組まなくていいんですよ。ないない。そんなの嘘なんです。

藤沢 本当にマーケティングの本でWin-Winってどれだけ出てくるかですよね。まさに恐怖から相手とどう折り合いをつけてコラボレーションできるかってところですよね。

福田さん だから、みんな理屈にしたいからWin-Winとか言っちゃって、土日感覚を忘れちゃうわけですけど。恋愛経験が少なすぎる。女の子って理屈通じないからどうやって口説くって時に恐れちゃうんですね。恐れてたら立ち向かわなければいいじゃんっていう若者が一部いるって聞きますけど、やっぱりチャレンジャーの方がいい。イノベーター、異端児、外にばっかり出てる人。

藤沢 あのー、意思決定ってリスクを捉えたり、成果をどこに置くかって非常に重要だと思うんですよ。日本人って自己主張が苦手なので、自分の得たいものをあやふやにしちゃう印象がすごく強くて。福田さんはリスクを取りながらもチャレンジできるのはなぜですか?

福田さん まあ一つ目はさっきも言ったように、何やってもコミットされた幼少時代があったんで、人を驚かせたいとか楽しませたいとか人と違ったことやりたいとかにためらいが無かったっていうのと、もう一つは母と父の影響で「弁が立つ」人間にたまたま育ったこと。人間って話す以外人と分かり合えることってないわけじゃないですか。やっぱり説明できるっていうのが人間として大きい特徴。

藤沢 そうですね。

福田さん 条件反射ってあるんですけど。あの、アメーバって1次条件反射で、何にも外的刺激なしに分裂しちゃうんです。パブロフの犬ってのが2次条件反射。梅干し見たら唾が出るみたいな何か条件に対しての反射ですね。で、人間って3次条件反射ができる唯一の存在なんですよ。記号の記号に対する反射です。つまり、言葉が読める。言葉が話せる。人間って言葉が最大の特徴。だから、ターザンみたいな体格がなくても社会で通用するじゃないですか。

僕は話したり説明するのが人よりまあまあうまいと思う。だから、これを詐欺とか悪いように使わないで、良いように使うよう努力してます(笑)

藤沢 素晴らしいですね。この前ライフネット生命の出口さんと対話させて頂いたんですけど、今の話と共通してる部分があって。

福田さん ほうほう。

藤沢 これからは脳の時代だと。脳って認知して、言葉として発信して。さらにいうと、人間って揺らぎで出来てると。揺らぎって振動なんですよね。振動って言葉じゃないですか。この言葉を操るって人間を操るって話に繋がってくるなって今思いました。

福田さん 人をコンビンスする力ですね。いかに遊んでたかっていうのと、いかに図書館にある主要な本を読んでたかだと思います。僕は中学生くらいの時に、図書館中にある本全部読もうと思って。別に同じ作者の本を10冊も読むわけじゃないですよ。でも、いろんな作者の本を読んで、難しい言葉があれば漢和辞典で調べて。言葉の知識が一定ある上で世界を旅すればある程度面白い人間なんじゃないかなと僕は思いますね。

藤沢 本日は貴重なお時間をありがとうございました。

福田さん またいつでもどうぞ!

福田淳(Atsushi Fukuda)/Profile

ソニー・デジタルエンタテインメント株式会社 代表取締役社長。1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。映画配給会社 東北新社を経て、アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。日本初の増田セバスチャン インスタレーション展 “Point-Rhythm World -モネの小宇宙-”の開催など既存の枠に留まらないコンテンツを世に発信し続けており、世界初のVR専門のアート・ギャラリーの運営も行っている。


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