Yusuke Fujisawa
CLAP社 代表取締役社長 原拓也さんとの対話

藤沢 ハラタクさん、お久しぶりです。今日はリモートですが、宜しくお願いします!
原さん 久しぶりだね。今日は宜しくお願いします。
藤沢 早速ですが、ハラタクさんは起業されて今どんな事業を展開されているんですか?
原さん 「健康寿命の最大化を実現」するためのサービスを展開していて、具体的には全国の大学病院や研究機関と提携し、病気の早期発見や予防対策を提供する医療サービスを提供しているよ。
原さん どうやって健康寿命を最大化させるのか、ということなんだけど。今はまだ、病気になってから、病院に行って治療を受けるよね。そこで外科や内科的な処置をしてもらったり、先端医療で治療を受けるという流れが一般的だよね。
藤沢 そうですね。
原さん CLAP社は何をするのかというと病気になる前に病気にならない対策つまり「予防医療事業」を通して、健康寿命を最大化させたいという思いからこの会社を作ったんだ。
例えば、ユースケが100年生きると仮定した時に大体平均すると健康的な人でも8年くらいは慢性疾患とか苦しい状態のいわゆる不健康を抱えた状態で寿命を終えると言われていて。
その期間を極力最小化して、ユースケも皆も健康で、長生きしてもらいたいよね。
藤沢 健康で長生きが一番ですね。間違いないです。
原さん でも一方で、現実的には難しい部分もあって。前職のジョンソン・エンド・ジョンソンで働いていた時に、主にがんやそのほかの疾患を治療する医療機器を販売していて手術に立ち会っていたんだよね。
担当医師の方々から、「ボロボロの状態で病気が見つかったとしたら、医師ができることは神でないからなんでもできるわけではない」というのが印象的で。当たり前だけど、お医者さんは何でも治せる神様じゃないと。
藤沢 なるほど。
原さん ジョンソン・エンド・ジョンソンはアメリカが本社で、世界でも多くの医療機器を販売していてロボットや技術を生かした医療の研究等もされている。そうした取り組みの中で、予防医療の領域で飛躍的に進化している現実を目の当たりにしていて。
日本ではなぜ予防医療があまり普及していないかというと、ご認識の通り国としての保険制度やルールがあって。
それぞれ良し悪しがあるから一概に何が良いと断定できない前提で話すと、日本の国民皆保険では、国が合法的に認めたルールの中で受ける医療は保険内診療で受けることができる。一方で、予防医療とか先端的な分野はどうしても保険外いわゆる実費で受けるしかない。
治療成果のN数が増えないと安全性も分からないし、実績も生まれないから、保険外から保険内に中々移行してこないよね。
そこで私の会社では、日本で常識化するまでには数年かかるような、未来の予防医療が受けることができたり、定期的なチェック、最適な医療情報を得ることができるという価値を提供していきたいと思っている。

藤沢 こうした最先端の予防医療分野の情報は、今の時代とても重要ですね。
原さん CLAP社では3つのサービスを提供していて、まず1つ目は全国の医療機関と提携して、どの部分がどのように悪くなっているかを定期的に全身をチェックできる人間ドック。
次に、研究機関の理研免疫再生医学さんと一緒に最先端の医療そのものでガンをはじめ病気になりにくくなる先端医療サービスを提供。3つ目は会員制医療サービス運営。この医療サロンサービスにはいくつか種類があって、わかりやすく言うとクレジットカードのシルバーとかゴールドのようにグレードの種類があって、そのグレードによってCLAP社で受けられるサービスの範囲が変わる。
例えば、シルバー会員の方向けに提供するのは、予防医療のサービスを受けられる病院を紹介するいわば「予防医療の食べログ」みたいな情報が集約されたプラットフォーム。そこでは情報として提供しているのは“医師が実際に行っている人間ドック”とかね。
サービスを受けた会員様の個人の生体データがCLAP社で蓄積し管理し、タイミングを逃さないためにも、予防段階でアプローチできるように分析をしていきたい。私たちが提供するのは、会員様とその時限りのお付き合いになるパッケージを作って販売するメーカーではなく、会員様とずっと寄り添うサービサーが理想。
人の細胞って数十兆個と言われていて、色々な変数があるけれど普段は健康だけどマイナスになるような原因を突き止めてゼロを目指せるような仕組みづくり。より個人に適した予防医療が受けられる世界観かな。
保険適用外なので今はどうしても個人負担となり、コストがかかってしまうので、サービスを受ける方は限定的になってしまうけれど、実績や知見を積み上げて、最終的には誰でも受けることができるようにしていきたいという想いがある。そこを目指しています。
藤沢 面白い取り組みですね。何故、ハラタクさんはこういった事業を運営できているんでしょうか。
原さん 予防医療という事業に関わっている背景でいうと、もともと幼少期に自分の親戚を癌で亡くしていた経験や、前職で医療業界にいたことが大きく影響しているけれど、こうやって事業を運営できているのはやっぱり人や仲間に恵まれていることが大きいかな。
大学の話になってしまうけど、ユースケも知っている法務責任者をしてくれている井田とか、他大学の友人とか、もちろん他の領域でもたくさん。色々な強みを持つ友人や仲間をつなげていくとシナジーが生まれて事業を起こすという形になったんだと思う。

藤沢 僕自身も人を紹介したり、様々な業界の方をつないでいくライフワークをしていますが、まさに化学反応が起きる瞬間を目の当たりにしてきています。
原さん そうだよね。CLAP社は医療というドメインだけど、強みを生かしながら化学反応が起きるように、色々なコミュニティや横の繋がりを生むハブとなっていきたいと思う。
藤沢 ありがとうございます。今の時流もありますし、健康への関心が高まっているなと。そういった視点で何か変化を感じたりされていますか?
原さん そうだね。まずは、時流に乗っているというのは感じる。
藤沢 間違いないですね。
原さん 変化を感じる具体的な話でいうと、新型コロナウィルス感染症という未知の疫病が現れたこともあり、世間が「予防」に対する意識が高まったと思う。
藤沢 確かに。
原さん 意識が高まったという意味では良いのだけれど。予防医療の分野からこの疫病を見るとまだまだ意識の課題があって。
健康を保つためには、外的要因と内的要因があって。「手洗い」や「うがい」とか外からの要因に対して、自分で防疫する意識は高まっている。じゃあ内的要因は?というと実はそこまで意識が高まっていないように感じているんだよね。
藤沢 免疫力を維持するというか、まさに内的な要因に目を向けると、例えば運動不足に気をつけるとかそういう文脈になりますでしょうか。
原さん 運動不足も内的要因の一つだよね。でもやっぱり体の中って見えないから、お医者さんじゃない限り普段生活していても状態はわからないよね。

藤沢 はい。見えないです。
原さん 予防医療に詳しい知人の中には、定期的に検診して体の状態を数値化してチェックしていたり、自分に合った必要なワクチンを打っている人もいるしね。結局はそれぞれの選択だけれど、もう少し自分の体の中に意識を向けて良いんじゃないかと思っている。
藤沢 非常に興味がありますね。
原さん 今回の疫病もシンプルで、体力が落ちていたり弱ったりすると発症するウィルスの一種。もちろん全てが同義ではないけど、一般的な感染症という意味では似ている要素もあって、例えばヘルペスウィルスは、人体の神経に棲みついて、普段は無症状で、体が弱ったら発症する。
つまり予防の前提として重要なのは、いかに体を弱らせないか、免疫力を維持できるかが鍵になってくる。そういう意味では、定期的に健康状態をチェックできて、内的要因からアプローチできる予防医療の手段がもっと一般化しても良いと思う。
藤沢 なるほど。
原さん 仕事と比較すると、仕事ってゴールがあるとそこに向けて色々と準備や段取りをするよね。でも自分の体に対して、ゴールを決めて色々とするのが病気になってからって不思議に思えるんだよね。健康でいるというゴールを設定した時に、予防医療という分野がもっと注目されて良いと思わない?
藤沢 思いますね。僕自身も自分なりに研究して予防に努めていますが、その指標というかベースがあるとないのとでは全然違いますからね。
原さん そうそう。予防医療の普及のためにも、会社としてこれから広げていくためにも、グローバルを前提として考えていて。
具体的な話はここではできないけれど、今特に海外のVCや投資家からの問い合わせが増えていて。ジョンソン・エンド・ジョンソンも世界的な企業だし、自社もそうなっていきたいから、日本のマーケットの中だけでサービスを展開するわけではなく、世界に目を向けた時に有益なサービスを展開できるベースを作っていきたいと考えているんだ。
ではなぜ世界に目を向けたり、リーディングカンパニーを目指そうとしているかと言うと業界の2位や3位にポジションを取るとやっぱりトップを目指そうとして追いつき追い越せで、新しいことには中々目を向けられないと思う。
だからこそ、世界基準でリーディングカンパニーを目指していきたいよね。
藤沢 これまでのハラタクさんの話からも、常に世界やトップを意識していることの大切さを学べます。ちなみにハラタクさんの原動力って何ですか。過去を振り返ると、家庭環境はどうだったんでしょうか。
原さん 色々原動力はあると思うんだけど、私が思うに両親が挑戦させてくれる環境で育ててくれたと思う。その認識はとてもあるかな。
藤沢 きっと両親からの愛情からですね。

原さん 私は末っ子なのですが、とにかく自由に何でもやらせてくれたし、放任主義じゃないけど、好きなことや興味があることをとことん応援してくれた。だから人が好きだし、人懐っこい性格に育ったというか。
藤沢 応援したいと思える人という意味でも、とても大事だと思います。
原さん あとは、自分が幸せなことも大事だけれど、周りの人が幸せかどうかもとても重要で。自分が好きな先輩や友達、後輩が楽しそうにしているのを見ている自分がすごく好き。
藤沢 すごく分かりますね。大学の頃も、ハラタクさんといると面白いし、周りの人が笑顔だったし、幸せそうでした(笑)。
原さん ありがとう(笑)。もちろん好き嫌いはあるけど、でも基本的には周りの人が楽しいか幸せでいるかが、自分の幸福度に影響していると思う。
自分だけ喜ぶっていう概念はあんまり良いと思ってなくて。シンプルに喜びを共有・シェアできないじゃない。やっぱり誰かと喜びをシェアしていけることに価値があると思っているから、仲間と喜ぶことを大事にしたいなぁと。だから人が「好き」だし。あとは「尊敬」が大事かな。
藤沢 「好き」と「尊敬」…。この2つって愛情の受け取り方のスタンスとして大切かもしれないですね。

原さん やっぱりリスペクトがないと人を好きになれないし、その人に愛情を与えられないし、受け取れないとも思っていて。
もちろん応援してくれているっていう状態はあるかもしれないけど、自分が好きで尊敬している人から応援される方がもっと愛情を受け取れるし、相手にダイレクトに伝わるよね。そこは大きいかも。
藤沢 今では特に好きから入っている自分を振り返ってみても、この言葉は学びがありますし、響きますね。
原さん もちろんユースケは大学の頃から好きだし、他の後輩もそうだし。やっぱり自分の周りにいる人はみんな好き。まず好きから入る。人って良いところ、悪いところは絶対あると思っていて。そういう視点だと、まず好きから入ることが重要なのかなと。
藤沢 ハラタクさんからその愛情は自然と伝わってきていました。社会に出て、ふと思い出してみると、大学時代にお世話になった先輩は愛情深く、良い人が多かったですね。
原さん 面白くて素敵な先輩が多かったと思う。だからお世話になった先輩から受けたことを、同じように自分ができることは後輩にはしていきたいという気持ちがあって。このインタビューもそうだし。
藤沢 ありがとうございます。ハラタクさんのそのスタンスがあるから、大学時代の仲間を巻き込めて事業として形にできているんだなぁと改めて感じています。
原さん そうだね。自分の会社の事業も、今まで話したように愛情があって前向きなサービスにしていきたい。でもその世界を実現するためには、フェーズがあって。やっぱりビジョンだけ掲げていてもサービスの質が低いって元も子もないから。
一緒にサッカーをやっていた時だって、超一流の環境で練習できるかどうか重要だと思う。極端な例だけど、Cロナウド選手やレアル、バルサのようなチームと戦えればそれだけで自分も意識変わりそうでしょう?

藤沢 意識は間違いなく変わると思います。
原さん それは予防医療も同じで。だからこそ、一流の予防医療を実践している研究機関や現場の方と一緒になって新しいことに目を向けて、どんどん換言・提供していくということをし続けていく必要があるなと思う。
その上で、仲間や好きな人と喜びを分かち合えることも同時に大切にしていければと。
藤沢 素晴らしいですね。引き続き、学びながら応援しています。今日はありがとうございました。
原さん ユースケのことも応援しているよ。ありがとう。

原 拓也(はら たくや):CLAP株式会社 代表取締役社長
1987年生まれ。慶應大学総合政策学部を卒業後、新卒で日本テレビ系列局にアナウンサーとして入社。2012年にJohnson&Johnsonに入社後、2015年日本No.1営業表彰受賞。
2016年に1社目を起業し、事業譲渡。その後、2社目のヘルステック領域で「CLAP株式会社」を設立。